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本や映画の感想

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大前粟生『きみだからさびしい』“「わたし、ポリアモリーなんだけど、それでもいい?」”

「好きなのに、さびしい」——このどうしようもない感情の渦に、あなたも飲み込まれた経験はないでしょうか。今回ご紹介する大前粟生さんの『きみだからさびしい』は、まさにそんな恋愛の核心を突く物語です。

主人公は、恋愛に臆病な青年・圭吾。彼が好きになったのは、複数の人を同時に愛することができる「ポリアモリー」の女性、あやめでした。好きだからこそ生まれる独占欲や嫉妬心と、相手を理解したいという思いの間で揺れ動く圭吾の姿は、読む者の心を強く揺さぶります。

大前粟生『きみだからさびしい』

きみだからさびしい (文春e-book)

あらすじ

僕の愛する恋人には、もう一人恋人がいる――
対等でありがたいともがき、傷つけませんようにと願う。
“恋がしづらい”この世の中で、20代から圧倒的支持を集める俊英、初の長編!

町枝圭吾、24歳。京都市内の観光ホテルで働いている。
圭吾は、恋愛をすることが怖い。自分の男性性が、相手を傷つけてしまうのではないかと思うから。
けれど圭吾には、好きな人がいる。二条城で毎日ランニングをしている、あやめさんだ。

想いを告げたら、あやめさんはこう言った。
「わたし、ポリアモリーなんだけど、それでもいい?」
ポリアモリーとは、複数の人とオープンな恋愛関係をもつこと。
あやめさんのことは丸ごと受け入れたい。だけど……

引用元:Amazon

作品の魅力・ポイント・感想

「普通」ってなんだろう? 現代の多様な愛のカタチ

本作の大きなテーマの一つが、多様な愛の在り方です。圭吾が好きになるあやめは、複数の恋人を持つ「ポリアモリー」。圭吾自身も、職場の同僚である男性、金井くんから好意を寄せられます。

ネット上でも、「現代的なテーマで考えさせられる」「恋愛観がアップデートされた」といった声が多く見られました。これまで「普通」とされてきた一対一の恋愛だけでなく、さまざまな愛のカタチがあることを、本作はごく自然に描き出しています。

圭吾は、自分の中にある「男らしさ」や「普通」という価値観に縛られ、恋愛に対して臆病になっていました。しかし、あやめや金井くんと関わる中で、その考えは少しずつ変化していきます。「普通」というものさしに囚われず、自分自身の感情と向き合うことの大切さを、圭吾の葛藤を通して教えてくれるのです。

傷つくことを恐れない、まっすぐな恋の物語

「人を好きになるのが怖い」と感じたことはありませんか? 圭吾は、自分の好意が相手を傷つけてしまうのではないかと恐れるあまり、自分の気持ちにさえ蓋をしていました。

しかし、あやめと出会い、彼女の奔放で自由な生き方に触れることで、圭吾は変わっていきます。傷つくことを恐れずに、自分の気持ちを相手にぶつけること。それこそが、本当の意味で相手と向き合うことだと気づくのです。

あなたの「さびしさ」に寄り添う物語

私がこの物語を読んで強く感じたのは、誰かを好きになることで生まれる「さびしさ」の肯定です。

圭吾は、あやめと一緒にいても、彼女が他の誰かのことを考えているのではないかと不安になり、さびしさを感じます。私自身、大学時代の恋愛を思い出し、胸が苦しくなりました。好きな人が自分だけのものであってほしいと願うのは、ごく自然な感情です。

しかし、この物語は、その「さびしさ」を否定しません。むしろ、「きみだからさびしい」のだと、その感情にそっと寄り添ってくれるのです。圭吾が最終的に選んだ選択は、決して単純なハッピーエンドではないかもしれません。それでも、彼が自分の感情と向き合い、一歩前に進もうとする姿には、確かな希望が感じられます。

自分の恋愛に悩んだり、人間関係に息苦しさを感じたりしている人にこそ、ぜひ手に取ってほしい一冊です。きっと、あなたの心にも温かい光を灯してくれるはずです。

おわりに

大前粟生さんの『きみだからさびしい』は、現代の多様な恋愛観を背景に、人を好きになることの喜びと苦しみ、そして「さびしさ」という感情そのものを、優しく肯定してくれる物語でした。

自分の気持ちに正直に、まっすぐに誰かを愛したい。読み終えた後、そんな風に思わせてくれる、新しい時代の恋愛小説です。