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綿矢りさ『勝手にふるえてろ』こじらせ女子の恋愛模様

綿矢りささんの小説『勝手にふるえてろ』は、現代の若者の心の機微を鮮やかに描き出した作品です。主人公ヨシカの恋愛模様を通じて、読者の心に深く響く物語が展開されています。

綿矢りさ『勝手にふるえてろ』

勝手にふるえてろ (文春文庫)

あらすじ

私には彼氏が二人いる──中学時代からの不毛な片思いの相手と、何とも思ってないのに突然告白してきた暑苦しい同期。26歳まで恋愛経験ゼロ、おたく系女子の良香は“脳内片思い”と“リアル恋愛”のふたつを同時進行中。当然アタマの中では結婚も意識する。しかし戸惑いと葛藤の連続で……悩み、傷つき、ついにはありえない嘘で大暴走!? 良香は現実の扉を開けることができるのか? 切なくキュートな等身大の恋愛小説。

引用元:Amazon

作品の見所・ポイント

繊細な心理描写

ヨシカの内面の揺れ動きが、鋭い洞察力と表現力で描かれています。思春期特有の漠然とした大きな感情の群れに言葉を与える綿矢りささんの筆力は圧巻です。現代社会に生きる若者たちの不安や孤独感、「つながりたい」という欲求と「傷つきたくない」という恐れの間での葛藤が、ヨシカの行動を通して巧みに表現されています。

「イチ」と「ニ」の対比

物語は主人公ヨシカと、彼女が思いを寄せる「イチ」、そして彼女に好意を寄せる「ニ」という三人を中心に展開します。「イチ」「ニ」という記号的な名前を用いることで、徹底してヨシカの内面描写に焦点を当てるという巧みな手法が取られています。この対比によって、理想と現実の狭間で揺れ動くヨシカの心情がより鮮明に浮かび上がってきます。

感想

『勝手にふるえてろ』は、単なる恋愛小説の枠を超えた奥深い作品です。ヨシカの心の動きを通して、読者は自身の内なる声に耳を傾けることの大切さを感じ取ることができます。

物語の中で、ヨシカは「イチ」への理想化された恋心と、「ニ」との現実的な関係の間で揺れ動きます。この葛藤を通じて、読者は自分自身の過去の経験を思い出し、共感を覚えるでしょう。特に、電話で友人の恋愛相談を夜遅くまで聞いていた思い出がよみがえってくるような親近感のある描写は印象的です。

綿矢りささんの繊細な筆致は、ヨシカの成長の過程を見事に描き出しています。自分の感情に正直になることの難しさや、他者との関係性の中で自己を確立していく様子が、時にコミカルに、時に切実に描かれています。ヨシカが自分の「エゴ」と向き合い、現実の人生を生きる決意をする姿は、読者に勇気を与えてくれます。

物語の終盤、「ニ」が「霧島くん」と呼ばれるようになる場面は特に印象的です。この変化は、ヨシカが理想化された恋愛観から脱却し、現実の人間関係を受け入れ始めたことを象徴しています。「現実の恋人は自分の思い通りにはならないけれど、それでも素敵な一面を持っている可能性がある」という気づきは、読者の心に深く響くでしょう。

おわりに

『勝手にふるえてろ』は、現代を生きる私たちに「自分の感情に正直に向き合うこと」の大切さを教えてくれる作品です。綿矢りささんの鋭い洞察力と繊細な筆致が織りなす本作は、恋愛小説の枠を超えて、現代社会を生きる人々の心の機微を鮮やかに描き出しています。

ヨシカの姿を通して、読者は自身の内なる声に耳を傾け、時に「勝手にふるえる」勇気を持つことの重要性に気づかされるでしょう。読了後、私たちは自分自身の内面と向き合い、新たな一歩を踏み出す勇気を得ることができるはずです。綿矢りささんのこの作品は、青春の迷いや不安を抱える全ての人におすすめできる一冊です。

参考リンク

booklog.jp

note.com

note.com

bookmeter.com

books.bunshun.jp