
宮部みゆきさんの『R.P.G.』は、2001年に刊行された文庫書き下ろし作品です。インターネット上の疑似家族と現実世界の事件が絡み合う、斬新なミステリー小説です。タイトルの「R.P.G.」には深い意味が込められており、読み進めるうちにその真意に気づかされる、読者を巻き込む仕掛けが施されています。
宮部みゆき『R.P.G.』
あらすじ
住宅地で起きた殺人事件。殺された男性はインターネットの掲示板上で「疑似家族」を作っていた。殺人に関わりが? 虚実が交錯し、見えてきたものは…
作品の魅力・ポイント

二重の「R.P.G.」が織りなす緻密な物語構造
『R.P.G.』のタイトルには、二重の意味が込められています。一つは、ネット上で疑似家族を演じる「ロール・プレイング・ゲーム」。もう一つは、物語の中で明らかになる、より深い意味でのロールプレイング。この二重構造が、読者を驚かせ、物語に引き込む大きな要因となっています。
時代を先取りしたインターネットと人間関係の描写
2001年の刊行当時、インターネット上の人間関係はまだ珍しいものでした。本作は、オンラインの空間と現実との付き合い方、家族の絆について深く考えさせる内容となっています。今でこそよくある設定に見えますが、当時の先見性は驚くべきものがあります。
舞台演劇を思わせる独特の物語展開
物語の大半が取調室で進行し、まるで舞台演劇を見ているような錯覚を起こさせます。登場人物たちの証言や、疑似家族が送っていたメールなど、様々な情報が交錯する中で、真実が少しずつ明らかになっていきます。
感想

『R.P.G.』を読んで、まず印象に残ったのはタイトルの意味深さです。最初は単純にネット上の疑似家族ごっこを指すものだと思っていましたが、物語が進むにつれて、その意味がより深く、複雑なものであることに気づかされました。
物語の展開は、正統派のミステリーという印象を受けました。2時間ドラマのようなサスペンス感があり、読者を引き込む力があります。特に、マジックミラー越しに疑似家族の取り調べを見る場面は、緊張感があふれていました。
また、BBSやチャットなど、懐かしいネットの世界が描かれている点も興味深かったです。これらを経験している世代にとっては共感できる部分が多いでしょう。一方で、若い世代にとっては少し理解しづらい部分もあるかもしれません。
宮部みゆきさんの作品の中でも、『R.P.G.』は特異な位置にあると感じました。ミステリーとしての面白さはもちろん、人間関係や社会の変化についても深く考えさせられる作品です。他の宮部作品のキャラクターが登場する点も、ファンにとっては嬉しい要素だと思います。
おわりに

『R.P.G.』は、単なるミステリー小説を超えた、人間の本質や社会の変化を問いかける作品です。タイトルの意味の深さ、インターネットと現実の世界の交錯、そして緻密に組み立てられた物語構造など、読み終えた後も長く心に残る要素が詰まっています。宮部みゆきさんの作品の中でも、特に印象的な一冊と言えるでしょう。時代を先取りした視点と、普遍的なテーマの融合が、この作品の大きな魅力となっています。
