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本や映画の感想

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吉本ばななが描く孤独と癒しの世界『キッチン』

吉本ばななさんの『キッチン』は、1987年『海燕』に掲載された短編小説です。主人公の桜井みかげが、大切な人を失った悲しみを乗り越え、新しい家族との出会いを通じて心を癒していく様子を描いています。この作品は、多くの人々の心に響き、今でも愛され続けています。

吉本ばなな『キッチン』

キッチン

あらすじ

私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う。

淋しさと優しさの交錯の中で、世界が不思議な調和にみちている――〈世界の吉本ばなな〉のすべてはここから始まった。定本決定版!

私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う―祖母の死、突然の奇妙な同居、不自然であり、自然な日常を、まっすぐな感覚で受けとめ人が死ぬことそして生きることを、世界が不思議な調和にみちていることを、淋しさと優しさの交錯の中であなたに語りかけ、国境も時もこえて読みつがれるロング・ベストセラー、待望の定本決定版。“吉本ばなな"のすべてはここから始まった。

引用元:Amazon

感想

私が『キッチン』を初めて手に取ったのは高校生の頃でした。当時は本棚で眠らせていましたが、結婚して実家を出る際に再発見しました。2020年に祖母を亡くした経験を経て、今回改めて読んでみると、作品の持つ深い意味をより強く感じることができました。

私の経験ですが、コロナ禍での祖母の死は悲しみよりも悔しさが先に立ちました。自粛生活で思うように会えなかったことが今でも心に引っかかっています。みかげのように号泣することはできていませんが、それはまだ祖母の死を完全に受け入れられていない証かもしれません。

喪失と孤独

みかげは大学生になったばかりのとき、最後の肉親である祖母を亡くします。突然の孤独に直面した彼女は、深い悲しみに包まれます。作品は、みかげが祖母の死を受け入れ、前に進もうとする姿を丁寧に描いています。

バスの中で見知らぬ祖母と孫の会話を聞き、思わず涙を流すシーンは特に印象的です。みかげは初めて本当の意味で祖母の死を実感し、激しく泣きます。このシーンは、喪失の痛みと向き合う大切さを教えてくれます。

キッチンという癒しの空間

タイトルにもなっているキッチン(台所)は、この作品の中で重要な役割を果たしています。みかげにとってキッチンは、孤独から身を守る場所であり、心の安らぎを得られる空間です。

キッチンは単なる料理をする場所ではなく、人々がつながり、失ったものを埋める場所としても描かれています。みかげと田辺家の人々が交流する場面の多くがキッチンで展開されるのは、そのためです。

新しい家族との出会い

みかげの人生に大きな変化をもたらすのが、田辺雄一とその母えり子との出会いです。雄一はみかげと同じ大学に通う1つ年下の学生で、みかげを自宅に招き入れます。

雄一の母えり子は、実は雄一の父親が性転換して女性になった人物です。この風変わりな家族との交流を通じて、みかげは少しずつ心を開いていきます。雄一とみかげが夢の中でつながるシーンは、運命的な出会いを感じさせ、読者の心をキュンとさせます。

おわりに

『キッチン』は、喪失の痛みと再生の希望を優しく描いた作品です。みかげの心の変化や、田辺家との交流を通じて、人とのつながりの大切さを感じることができました。

この物語は、悲しみに包まれた人々に寄り添い、新しい出会いや関係性が人生を豊かにすることを教えてくれます。『キッチン』は、心に優しく響く、温かな物語として、これからも多くの人々に愛され続けることでしょう。

キッチン

キッチン

  • 川原亜矢子
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