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長嶋有『猛スピードで母は』“「あんたはなんでもやりな。私はなにも反対しないから」”

長嶋有さんの『猛スピードで母は』は、現代的な母子関係を鮮やかに描いた作品です。小学6年生の少年と自由奔放な母親の日常を通じて、新しい家族のあり方を提示しています。軽やかな文体と独特のユーモアで、重たくなりがちなテーマを読みやすく表現しているのが特徴です。この作品は、2001年に発表され、第126回芥川賞を受賞しました。従来の日本文学にはない新鮮な母親像と、子どもの視点から描かれる日常が、多くの読者の心を掴んでいます。

長嶋有『猛スピードで母は』

猛スピードで母は (文春文庫)

あらすじ

「私、結婚するかもしれないから」「すごいね」。小6の慎は、結婚をほのめかす母をクールに見つめ、母の恋人らしき男ともうまくやっていく。現実に立ち向う母を子どもの皮膚感覚であざやかに描いた芥川賞受賞作

引用元:Amazon

作品の魅力・ポイント

軽やかな文体で描かれる母子の物語

長嶋有さんの『猛スピードで母は』は、さらさらと流れるような軽やかな文体が特徴です。一見すると重たくなりそうな母子家庭の話を、テンポよく描いています。この軽快な文章のおかげで、読者は物語にすんなりと入り込むことができます。むだな言葉を省いた的確な表現で、現代的な母親像を鮮やかに浮かび上がらせています。

新しい時代の母親像

この作品の魅力は、従来の日本文学にはない新しいタイプの母親を描いていることです。強くて明るく、少しだけ雑な感じのする母親のキャラクターは、現代社会をよく反映しています。控えめで耐え忍ぶ従来の母親像とは対照的で、リアルで親しみやすい存在として描かれています。この新鮮な母親像が、物語に独特の魅力を与えています。

子どもの視点から描かれる日常

『猛スピードで母は』のもう一つの魅力は、子どもの目線で日常を描いていることです。小学6年生の主人公を通して、母親との関係や周囲の出来事が生き生きと描かれています。子どもならではの素直な感情や、大人には見えない世界が丁寧に表現されており、読者の共感を呼びます。特に、母親の行動を見つめる主人公の心情描写は印象的で、親子の絆の深さを感じさせます。

感想

長嶋有さんの『猛スピードで母は』は、自由奔放な母親とその息子の関係を描いた物語です。最初は昭和の時代をイメージして読み始めたのですが、物語が進むにつれて、現代的な雰囲気があることに気づきました。そこに若々しい母親像が登場します。少し自己中心的で、ヤンキー上がりのような雰囲気を持つ母親は、従来の文学作品ではあまり見られない新鮮なキャラクターです。映画『菊次郎の夏』を思わせるロードノベル的な要素も感じられ、母親=菊次郎な感じで読めました。

印象的だったのは、母親が彼氏とのデート中に交通事故に遭い、夜遅くまで帰ってこない場面です。小学校高学年とはいえ、一人で夜を過ごす息子の状況には胸が痛みました。それでも、「もう帰ってこないかもしれない」と腹をくくった彼の姿には驚きと感動を覚えます。大人顔負けの度胸と冷静さを見せる息子は、本当に立派です。私自身、一人で行動することが苦手なので、その強さに憧れます。この場面は親子関係や主人公の成長を深く感じさせる重要なシーンでした。

おわりに

『猛スピードで母は』は、軽やかな文体と新しい母親像、そして子どもの視点という3つの要素が見事に調和しています。重たくなりがちなテーマを、読みやすく親しみやすい形で提示することで、幅広い年代の読者に訴えかける力を持っています。長嶋有さんの独特の文学スタイルが存分に発揮された、現代日本文学を代表する一作といえるでしょう。

参考リンク

shosetsu-maru.com

www.d3b.jp

note.com