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村田沙耶香『授乳』“「――ねえ、ゲームしようよ」”

『授乳』というタイトルから、あなたはどんな物語を想像しますか?母と子の心温まるストーリーでしょうか。でも、もし作者が『コンビニ人間』の村田沙耶香さんだと知ったら、きっと「普通」の話ではないと気づくはずです。

この物語は、私たちの常識や倫理観を、静かに、でも確実に揺さぶってくる衝撃作。一度読んだら、その独特な世界観が頭から離れなくなる、忘れられない読書体験が待っています。

村田沙耶香『授乳』

授乳 (講談社文庫)

あらすじ

受験を控えた私の元にやってきた家庭教師の「先生」。授業は週に2回。火曜に数学、金曜に英語。私を苛立たせる母と思春期の女の子を逆上させる要素を少しだけ持つ父。その家の中で私と先生は何かを共有し、この部屋だけの特別な空気を閉じ込めたはずだった。「――ねえ、ゲームしようよ」。

引用元:Amazon

作品の魅力・ポイント・感想

完璧な家庭に漂う、静かな狂気

この作品のレビューで、多くの読者がまず心を掴まれるのが、主人公を取り巻く家庭の静かで、少し歪んだ空気感です。

母親は、どんな料理でもきっちり調味料をはかる完璧主義。父親は、家族よりもテレビに話しかける。一見するとどこにでもありそうな光景ですが、その中に潜むコミュニケーションの断絶や、見えないルールが、じわじわと息苦しさを感じさせます。特に、母親が一度ゴミ箱に捨てたパセリを、何事もなかったかのように皿に戻すシーンは、多くのレビューで「不気味で印象的」と語られるほど、静かな狂気をはらんでいます。

この完璧に見える日常に潜む違和感こそ、村田沙耶香さんの作品の大きな魅力であり、多くの読者が「この気持ち悪さがクセになる」と評価しているポイントです。

「くらげみたい」な先生の、謎めいた存在感

そんな息苦しい日常に現れるのが、家庭教師の「先生」です。主人公が「くらげみたいに透き通っている」「むきたての物質」と表現する彼は、感情が読み取れず、何を考えているのか全く分かりません。

ネット上の感想でも、この先生の存在は「主人公の狂気を映す鏡」や「彼女のどんな行動も受け入れてくれる安全地帯」など、様々な形で解釈されています。彼は、主人公の異常な行動を、驚きもせず、否定もせず、ただ静かに受け入れます。 この彼の謎めいた態度が、物語を誰も予想できない方向へと加速させていくのです。

多くの読者が指摘するように、この先生は、物語の「最大の謎」であり、同時に「最も重要な鍵」を握る人物。彼の存在なくして、この物語の衝撃的な結末はありえませんでした。

常識が溶ける、クレイジーで面白いクライマックス

そして物語は、誰もが息をのむ核心部分へと向かっていきます。ここからは、私自身の感想として、この物語がどれほど心を揺さぶったかをお伝えさせてください。

正直に言うと、読み終えた直後は「一体、自分は何を読んでしまったんだ…?」と、しばらく呆然としてしまいました。物語の展開は私の想像を遥かに超えていて、その常識から逸脱した「クレイジーさ」に、ただただ圧倒されたんです。でも、その衝撃は不快なものではなく、むしろ「面白い」という感情の、最も尖った部分を突きつけられたような、強烈な感覚でした。

タイトルの「授乳」という行為が描かれる場面。それは、私の想像とは全く違う、歪んだ形で現れます。しかし、その異常な光景の中に、私は主人公のどうしようもなく切実な心の叫びを聞いた気がしました。「誰かに認められたい」「自分という存在を、ただ受け入れてほしい」。そんな思春期特有の、純粋で、でも行き場をなくして歪んでしまった願いが、あの行動に凝縮されていたのではないでしょうか。

これは、決して安易に共感できる物語ではありません。むしろ「良い子は絶対に真似しないでね」と言いたくなるような、危うさをはらんだ文学です。でも、だからこそ、この物語は忘れられない体験として、私の心に深く、そして鮮烈に刻み込まれたのだと思います。

おわりに

村田沙耶香さんの『授乳』は、「普通ってなんだろう?」「常識って、誰が決めたもの?」と、私たちの価値観を激しく揺さぶってくる物語です。

読み心地の良い、優しい話ではありません。むしろ、心にチクチクと刺さるような痛みを感じる人もいるでしょう。でも、その痛みこそが、この作品が持つ力なんだと思います。読み終わった後には、きっとあなたの心に、忘れられない何かを深く刻みつけてくれるはずです。

日常にどこか窮屈さを感じている人、人間の心の奥深くに潜む、綺麗事だけじゃない感情を覗いてみたい人。そんなあなたにこそ、この強烈な読書体験を味わってみてほしいです。

参考サイト

booklog.jp