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本や映画の感想

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林由美子『ママン』歪んだ母性愛の闇

林由美子さんの短篇小説『ママン』は、一見普通の母子関係に潜む恐ろしさを描いた作品です。『5分で読める!ぞぞぞっとする怖いはなし』に収録されているこの物語は、読者を驚かせ、ゾクッとさせる要素が詰まっています。母性愛の行き過ぎた形が引き起こす悲劇を通じて、人間関係の複雑さを浮き彫りにしています。

林由美子『ママン』

5分で読める! ぞぞぞっとする怖いはなし (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

あらすじ

彼氏の実家に招かれた主人公。しかし、そこでは彼の母親による不可解な言動とエスカレートする嫌がらせが待ち受けていた。異常な母子関係に疑問を抱きながらも、恐怖の一夜を過ごすことになる。

作品の魅力・ポイント

母性愛の闇を描く衝撃的な展開

『ママン』の最大の魅力は、一般的に美しいものとされる母性愛の闇の部分を描き出している点です。主人公の母親が息子の彼女に対して行う行動は、読者の予想を裏切り、ゾッとするような展開を生み出します。この意外性が物語に深みを与え、読者を引き込みます。

リアリティのある人物描写

高校生の息子が母親を「ママ」と呼ぶ設定は、一見違和感があるかもしれません。しかし、現代の親子関係の多様性を反映した設定とも言えます。このリアリティのある人物描写が、物語の恐怖をより身近なものに感じさせる効果を生んでいます。

巧みなどんでん返し

林由美子さんの腕の見せどころは、物語の最後に用意された見事などんでん返しです。それまでの展開を覆す結末は、読者に強烈な印象を与えます。この予想外の展開が、短篇ならではの魅力を最大限に引き出しています。

感想

『ママン』を読んで、私は本当に「ぞぞぞっ」としました。母親の行動が徐々にエスカレートしていく様子は、背筋が凍るような恐怖を感じさせます。特に、息子の彼女に対する嫌がらせの描写は衝撃的でした。

元カノの写メやメール(LINE?)のやりとりを見せてきたり、カッターで手の甲を切りつけたりする行為は、明らかに常軌を逸しています。しかし、これらの行動が現実世界でも起こりうる可能性を考えると、さらに恐ろしさが増します。

物語を通じて、母性愛の歪んだ形が描かれていますが、同時に人間関係の複雑さも浮き彫りになっています。特に、同性同士の関係性がバチバチとぶつかり合う様子は、現実社会でもよく見られる光景かもしれません。

林由美子さんの巧みな筆致により、短い物語の中に濃密な恐怖と驚きが詰め込まれています。最後のどんでん返しは見事で、「うわぁ……」という後味の悪さが最高です。

おわりに

『ママン』は、母性愛という普遍的なテーマを恐怖小説として描き直した秀作です。日常に潜む恐怖を巧みに描き出し、読者の心に深く刻まれる印象的な物語となっています。林由美子さんの繊細な心理描写と、予想外の展開を生み出す構成力が光る作品です。