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本や映画の感想

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仙水成『冬蛍』大学生の儚い恋と葛藤を描く青春

仙水成さんの『冬蛍』は、現代の大学生の恋愛と葛藤を鮮やかに描き出した作品です。主人公の沙夜を通して、若者の複雑な心情や関係性が丁寧に紡ぎ出されています。この小説は、大学生の日常と恋愛の機微を通じて、私たちに青春の輝きと苦悩を再体験させてくれます。

仙水成『冬蛍』

『江古田文学 88』所収作

江古田文学 第88号

あらすじ

『冬蛍』は、大学3年生の沙夜を主人公とした青春小説です。彼女が彼氏の准に頼まれて30万円もの借金をするところから物語は始まります。沙夜と准の関係、そして准の親友である隼人との距離感の変化を通じて、現代の若者が直面する様々な問題が浮き彫りになっていきます。

感想

リアルな大学生の日常と恋愛

仙水成さんは、大学生の日常と恋愛を驚くほどリアルに描写しています。沙夜と准の関係性や、周囲の友人たちとの交流を通じて、学生生活の様々な側面が生き生きと描かれています。特に、沙夜が准との関係に疑問を感じながらも、なんとなくその関係を続けている様子は、多くの大学生の恋愛の実態を如実に表しています。

沙夜と准の会話や行動を通じて、大学生特有の悩みや喜びが伝わってきます。例えば、准との関係が冷めていく中で感じる不安や、隼人との距離が近づくことへの複雑な感情など、多くの人が共感できる場面が散りばめられています。

叶わぬ恋と成長の過程

『冬蛍』は単なる恋愛小説ではありません。沙夜が准との関係に疑問を感じながらも、隼人への気持ちが強くなっていく様子を通じて、青春期特有の葛藤と成長の過程が描かれています。

特に印象的なのは、隼人が昔見た富山県の蛍の思い出が、沙夜と隼人が一緒に見ることのない儚い記憶として描かれている点です。この描写は、二人の関係性の限界を象徴すると同時に、青春の儚さを表現しています。

沙夜が最終的に准との関係を続けていくことを受け入れる姿は、現実と理想の狭間で揺れ動く若者の姿を象徴しています。これは、恋愛を通じて自己を確立していく過程であり、多くの人の心に響くでしょう。

おわりに

『冬蛍』は、現代の大学生の恋愛と日常を鮮やかに描き出した作品です。

アラフォー世代の私にとって、この作品は大学時代の記憶を鮮明に呼び起こすものでした。スマートフォンやSNSの普及など、時代の変化はあれども、若者たちの悩みや喜びの本質は変わっていないことを感じさせてくれます。

『冬蛍』は、青春の輝きと苦悩、そして成長の過程を描いた素晴らしい作品です。この物語は、私たちに自身の青春を再体験させると同時に、現代の若者たちの心の内を覗き見る窓となってくれるでしょう。

江古田文学 第88号

江古田文学 第88号

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