尾崎世界観さんの『ただしみ』は、ライブカメラの配信を観る人々を描いた作品であり、現代のメディア環境に対する鋭い視点が光ります。私たちがどのように「真実」を求め、受け止めていくのかを考えさせられる内容です。
尾崎世界観『ただしみ』
『文藝 2021年春季号』所収作感想
ライブカメラの魅力
確かに、一時的にハマる時期があるのがライブカメラです。私もその魅力に取り憑かれたことがあります。何気ない日常の瞬間が、リアルタイムで映し出されることに、どこか心が安らぎます。加工や演出がないその姿は、まさに「生」の感覚を与えてくれるのです。
近未来のメディア環境
『ただしみ』では、テレビやYouTubeがオワコンになる未来が描かれています。この設定は、一見すると非現実的に思えるかもしれません。しかし、現在のメディアへの不信感や、真実を求める人々の欲求を考えると、決して遠い未来の話ではないと感じます。
尾崎世界観さんの問いかけ
尾崎世界観さんは、このようなライブカメラの特性を巧みに利用しながら、近未来社会の姿を描いています。それは決して荒唐無稽な世界ではなく、現実味を帯びた未来図として読者に迫ってきます。私たちがどのように「真実」を受け止めていくのか、その問いかけが静かに響きます。
おわりに
『ただしみ』は、私たちに深い余韻を残す作品です。ライブカメラに映る世界は「嘘がない」かもしれませんが、その向こう側には私たち自身の姿が映っています。この作品を通じて、自分自身と向き合う機会を与えられたような気がします。
