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本や映画の感想

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古市憲寿『平成くん、さようなら』“「僕はもう、終わった人間だと思うんだ」”

みなさん、こんにちは!今回は、古市憲寿さんの小説『平成くん、さようなら』を紹介したいと思います。

この小説は「安楽死」というすごくシリアスで難しいテーマを扱っているんだけど、それだけじゃないんです。現代社会の空気感とか、今どきのちょっと変わった人間関係とか、「生きるって何だろう?」「死ぬってどういうこと?」っていう深い問いかけが、古市憲寿さんならではのクールで、でもどこか優しい視点で描かれています。

読み終わった後には、なんだか心がザワザワして、色々なことを考えさせられる…。そんな、忘れられない読書体験ができる一冊です。

古市憲寿『平成くん、さようなら』

平成くん、さようなら (文春文庫)

あらすじ

平成を象徴する人物としてメディアに取り上げられ、現代的な生活を送る「平成くん」は合理的でクール、性的な接触を好まない。だがある日突然、平成の終わりと共に安楽死をしたいと恋人の愛に告げる。
愛はそれを受け入れられないまま、二人は日常の営みを通して、いまの時代に生きていること、死ぬことの意味を問い直していく。
なぜ平成くんは死にたいと思ったのか。そして、時代の終わりと共に、平成くんが出した答えとは――。
『絶望の国の幸福な若者たち』『保育園義務教育化』などで若者の視点から現代日本について考えてきた著者が、軽やかに、鋭く「平成」を抉る!

引用元:Amazon

作品の魅力・ポイント

新しい時代のカップルのカタチ?「私」と平成くんの独特な関係性

まず注目したいのが、主人公の「私」(瀬戸愛)と、「平成くん」こと平成(ひとなり)の関係性です。この二人、恋人同士なんですが、いわゆる「普通のカップル」とはちょっと違うんです。

なんと、二人の間には性的な関係がありません。それは平成くんが望まないからなんですが、愛はそれを受け入れて、彼との精神的な繋がりを大切にしています。読んでいると、「えっ、それで恋人って言えるの?」って思う人もいるかもしれないけれど、二人の間には、言葉にしなくても伝わるような、深い信頼と心地よさがあるんです。

お互いを縛り付けるんじゃなくて、それぞれの価値観を尊重し合って、二人だけの特別なルールで成り立っている。例えば、愛が使うアダルトグッズの費用は平成くんが払う、という取り決めがあったりします。それはお金の問題じゃなくて、二人の間の「妥協であり、結束の象徴」なんだそうです。

この二人の関係を見ていると、「恋人とか夫婦とか、パートナーの形って、もっと自由で多様であっていいのかも」って思えてきます。現代における新しいパートナーシップの可能性を感じさせてくれる、すごく興味深いポイントです。

「平成」を背負った男、平成くんという存在

物語のタイトルにもなっている「平成くん」。彼の本名は平成(ひとなり)で、元号が「平成」に変わったまさにその日に生まれた、という設定です。この名前が、彼の人生にものすごく大きな影響を与えていくんです。

彼は、大学時代に書いた論文がきっかけで、注目されるようになります。特に、東日本大震災の後、彼の論文が「時代の声」としてメディアに取り上げられ、「平成」生まれの論客、「平成くん」として一躍有名人になるんです。「ゆとり世代」とか「さとり世代」とか、そういう言葉が流行るたびに、彼は「平成」を代表する人物としてコメントを求められる。

なんだか、「平成」という時代そのものを、一人で背負わされているみたいですよね。メディアに持ち上げられたり、逆に批判されたり…。彼の存在を通して、私たちが生きてきた「平成」という時代がどんな時代だったのか、そして、メディアがどうやって一人の人間を「時代の象徴」として作り上げ、消費していくのか、そんな現代社会の姿が映し出されているように感じます。彼のキャラクター設定は、この物語の大きな魅力の一つです。

安楽死が身近にある世界で問われる「生と死」

この物語の舞台は、なんと安楽死が制度として認められている日本です。

「人生100年時代」なんて言われて、長生きすることが良いことだとされている社会で、「死にたい」と願うことは、普通じゃないと思われるかもしれません。でも、この小説を読むと、「本当にそうなのかな?」って考えさせられます。長く生きることだけが幸せなんだろうか? 自分の意思で死を選ぶことは、いけないことなんだろうか?

物語の中では、実際に安楽死を選ぶ人々のセレモニーの様子なども描かれます(ちょっと衝撃的な場面もありますが…)。そこには、単なる悲しみだけではなく、様々な人間の思いや、社会の抱える問題が見えてきます。

安楽死という重いテーマを扱いながらも、この作品は決して答えを押し付けてきません。ただ、「生きること」「死ぬこと」について、私たち自身がどう考えていくべきなのか、深く問いかけてきます。読みながら、自分の価値観が揺さぶられるような、そんな体験ができるはずです。

感想

まず、何と言っても主人公カップルの関係性!お互いをめちゃくちゃ大切に思ってる。その中でも、「仮に私が人を殺してしまったとしても『それほどの理由があったんだね』と肩を叩いてくれると思う」っていう愛の言葉! ここ、本当にしびれました!普通、恋人に求めるのって、甘い言葉とか、ロマンチックな行動とかかもしれないけど、愛が平成くんに感じているのは、そういうのを超えた「絶対的な肯定」なんですよね。どんな自分でも受け入れてくれる、最後の砦みたいな存在。見返りを求めない、ただ相手の存在そのものを肯定する。こんな関係性って、めちゃくちゃ尊くないですか? パートナーシップってこういう形もあるんだ、いや、むしろこういう繋がりこそが本質なんじゃないかって、強く思わされました。この一文だけで、二人の関係の深さが伝わってきて、すごく感動したんです。

そして、愛が、平成くんからもらったスマートスピーカーに語りかけるシーン。「ねえ平成くん」って何度も何度も。まるで、すぐそこに平成くんがいるみたいに。その一つ一つの言葉が、もう切なくて、愛おしくて…。二人が過ごしてきた時間とか、愛の平成くんへの深い想いとかが、痛いほど伝わってきて、涙が止まりませんでした。特に最後のやり取り。もう、言葉にならない…。悲しいはずなのに、どこか温かくて、静かで、美しい。これこそが、二人が築き上げてきた愛の形なんだなって。こんなに静かで、でも強烈に心に残るラストシーンは、なかなかないと思います。読み終わった後も、この場面がずっと頭から離れませんでした。まさに、純愛。

おわりに

古市憲寿さんの『平成くん、さようなら』は、安楽死という重いテーマを扱いながらも、それだけではない、たくさんの魅力が詰まった物語です。

新しい時代のカップルのあり方、メディアと個人の関係、「平成」という時代、そして「生きること」「死ぬこと」の意味…。読みやすい文章でスラスラ読めるのに、読んだ後には、自分の心の中にたくさんの問いが生まれてきます。

特に、今までの「当たり前」とされてきた価値観や人間関係に、どこか窮屈さや疑問を感じている人には、ぜひ読んでみてほしいです。きっと、主人公たちの生き方や考え方に、共感したり、反発したりしながら、自分自身の考えを深めることができるはずです。

クールな視点の中に、登場人物たちの繊細な感情が丁寧に描かれていて、読み終わった後には、切なさとともに、不思議な温かさが残ります。そして、自分自身の人生や、大切な人との関係について、改めて考えるきっかけをくれる、そんな力を持った小説だと思います。

気になった方は、ぜひ手に取って、この独特な世界観と、心に響く物語を体験してみてください!